この界隈に精通している読者諸君であれば、「禁足地」という言葉を聞いたことがある者は案外多いかもしれない。
別件からの縁で調べる内に興味深い部分も浮き彫りになったので、この際入門編用にまとめてみようと筆を取っていく。
禁足地とは
意味としては字のごとく、「足を踏み込む事が禁止された土地」のことである。立ち入り禁止区域と同義では?とも過るので本章前に整理しておく。
立ち入り禁止区域も「立ち入ることを禁じられた区域」ではあるが、禁足地との明確な違いは『どのような理由で禁止されているか』『誰が禁止しているか』の2点だろう。
立ち入り禁止区域は災害や伝染病など人体へ影響が出る可能性や、自然環境保護の必要性から立ち入りを制限・禁止している場合が多く、その際区域を指定しているのは各行政機関である。災害対策基本法、自然環境保全法など国の法律に則り指定されるので指定区域に侵入した場合は法によって罰せられる。
一方禁足地はその土地にまつわる歴史や文化に加え、宗教信仰的観点から立ち入りを禁止された土地であり、どこかの機関が「この地を禁足地に指定する!」と決めるというよりは言い伝えや伝承に詳しい地元の人々が「あそこでは粗相すると神様や祀ってある霊の祟りを被るから立ち入ってはいけないよ」と触れ回ることで禁足地として認知されていく。
よって正式な法や機関によって定められているわけではないが、対象の土地の所有者に断りなく入ったりそこで物を壊したりした場合は相応の罪に問われることは念頭に置いておきたい。
国外・国内の禁足地
実際に国内外で禁足地と呼ばれている場所をざっくりと比較していく。
日本各地の禁足地を調べると、そこそこの数が挙げられている。
八幡の藪知らず
千葉県にある一角を柵で覆われた森地帯。
面積はそれほど広くないのだが地元民の間では「立ち入ると二度と森の外へ出られなくなる」といわれ、恐れられている。

沖ノ島
福岡県にある世界文化遺産にも登録されている離島。
古くから神住まう島として伝わる。上陸=神事の扱いで、限られた神職の者が厳しい制限の中でようやく上陸できる。
オソロシドコロ
長崎県対馬市にある龍良山。対馬特有の信仰「天道信仰」の聖地。
天道法師とその母が祀られた郭はかつて見るのも厳禁とされたが、現在は規則を守ることで入山・参拝可。
御塚
東京都の新田神社の奥、有刺鉄線と柵で囲まれた林。
神社が祀っている新田義興の遺体が埋葬された円墳があり、迷い塚とも呼ばれ入った者には祟りがあるとされる。
フボー御嶽
沖縄県にある琉球神話に基づく神域。祖神アマミキヨが降臨した場所といわれている。
現在一般人の立ち入りは不可となっている。
一方、世界の禁足地をネットで調べようとすると、2012年に観光旅行専門サイト「CNN Go」が発表した「世界7大禁断の地」がヒットする。
チェルノブイリ遊園地(プリチャピ遊園地)
ウクライナチェルノブイリ原発から数キロ離れた場所にある遊園地跡。
1986年の事故後立ち入り禁止区域に指定され、近年は規制が緩和されていたとのことだが世界情勢的にも現在の立ち入りはほぼ不可かと。
セドレツ納骨堂
チェコにある納骨堂。4~5万人の人骨が納骨され、内1万人分の人骨で内装が装飾されている。
青木ヶ原樹海
勝手知ったる我が国からのランクイン。物騒な看板が立つ名所としての知名度が高い富士山の膝元の森林地帯。
樹海そのものが天然記念物指定であり、文化財保護法などにより整備された林道以外への侵入が禁止されている。
アコデセワのブードゥー崇拝市場
アフリカ地方のトーゴ共和国で行われるブードゥー教専門のマーケット。
ブードゥー教の祈祷に使う道具が売られている。
ソチミルコの人形島
メキシコにある、サンタナという男が生涯かけて人形だらけにした島。
島の畔で溺死した少女を弔う目的で島に流れ着いた人形を祭壇に飾ったのが始まり。現在は観光地となっておりツアーに参加することで上陸可能、観光客が人形を持ち込むため島内の人形の数は今も増えているらしい。

軍艦島(端島)
まさかの日本から2ヶ所目のランクイン。長崎県にあるかつて炭鉱採掘で栄えた無人島。
建物の老朽化と一部世界文化遺産として保護義務があるため規制されているが、見学ツアーに参加することで上陸可。
コンジアム精神病院(南陽精神病院)
韓国にある精神病院跡。地元では有名な心霊スポットで、2018年にはこの場所をモデルにしたホラー映画も制作されている。
国内外の禁足地に対する認知
こうして並べると、国外の禁足地は
「かつて起きた事故や当時の歴史を象徴する建造物や土地が対象」
「その土地や建造物を保存・保護する目的で禁足としている」
「規則を守ることで一部立ち入り可、何なら観光ツアーがちゃんとある」
という立ち入り禁止区域に近しい特徴が見られる。
(個人的には精神病院だけ異質な選定にも感じるが…)
そして国内の禁足地は
「宗教や神話に基づく神聖な場所、聖地扱い」
「禁足は地元民による伝承とその地に在る神への畏怖の念で成り立っている」
「立ち入り=神事の扱いで一般立ち入り禁止の場所もいまだに多い」
と、国外の禁足地とは雰囲気も毛色も違うように感じる。
無論今回国外の禁足地として挙げたのが観光サイトの選定であったというのも影響するだろうし、探せば国外にも神域…日本のそれに近い雰囲気の禁足地は存在すると思う。
現地でタブー扱いとなっている情報は原文は勿論和訳を探すのも容易ではないかもしれないが、その一苦労もまた探訪の一興として調べてみるのも乙ではあるだろう。
※画像はイメージです。


思った事を何でも!ネガティブOK!