病院は生と死が交差する場所です。
人を救うための施設でありながら、同時に多くの人がそこで最期を迎えます。
そのためか、病院はさまざまな物語の舞台として描かれてきました。
感動の人間ドラマもあれば、背筋の寒くなるような怪談もあります。
私自身はどちらかといえば、ホラーや怪談の類が好き。
とくに病院を舞台にした作品には、現実と非現実の境界が曖昧になる独特の怖さがあってヒヤッとします。
ただ「怖いな」と思う程度で、自分が当事者になるなど考えもしなかった。
見つめる先
数年前、父が入院していました。
何度も癌の手術を乗り越えたのですが、胆石で再び入院した頃にはすっかり体力を奪われていました。
その時に胃に転移した癌がみつかり、症状が進んでいたので医師から「長くないかもしれない」との言葉。
それでも、本人には悟られぬよういつものように見舞いに通っていたときです。
ある日、会話の途中、父がふと天井をじっと見つめました。
「虫でもいるのか」と私も目線を追うのですが、何も見当たりません。
父はやがて、天井に埋め込まれたエアコンの通風孔を指差して、「あそこから誰かが見ている」と言いいます。
しかし、そこに人が入れるような空間などはありえないし、病院の天井に誰かが潜んでいるはずもありません。
「誰もいないよ」と伝えても、父はしばらく視線を外そうとせずに、その顔は、言葉で言い表せない複雑な表情でそた。たぶん、強い薬を飲んでいたので副作用による幻覚なのでしょう。
その瞬間、ふと、かつて読んだ怪談を思い出しました。
患者が知らない“誰か”を見た直後に亡くなる話です。
数ヶ月後、父は静かに息を引き取ったのでした。
偶然なのか、それとも
偶然なのか。それとも、あの怪談は現実なのは?
だとすれば、父が見た「視線」は、死を間近にした人間だけが感じる何かだったのかもしれません。
科学的に見れば幻視や脳の錯覚で説明がつきます。
しかし「死期が近い者にしか見えない」という現象を、怪談以外でも聞く事があります。
すると、父が見た、その何かは俗に言う”死神”なのかもしれない・・・。
そんな事を思いながら、父の病室に残った私物を整理していた時です。
ふと、天井に埋め込まれたエアコンの通風孔が気になって見上げると・・・暗い奥から見つめる目と視線が合った。
驚いて凝視すると、それは微笑んだように見えました。
ハッとして目をこすってみると、そこにはなにもありませんでした。
でも、もしそうだと死神を見てしまったのかもしれません。
※画像はイメージです。


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