昔の潜水艦は潜水が苦手だった?
潜水艦の今昔物語です。
水の抵抗
水中を物体が進む時、主に下記の抵抗を受ける。
- 圧力抵抗 物体の全面と後面の水圧の差による
- 造渦抵抗 物体の周囲に発生する渦による
- 摩擦抵抗 物体表面と水の摩擦による
そして物体が水上を進む時には、さらに造波抵抗を受ける。
これは物体の進行エネルギーが、水中では発生しない波を造るからである。
従って同じ物体が水中を進む時、造波抵抗を受ける水上より速度が速くなる。
潜水艦の形と最高速度
| 原潜バージニア級(米) | 原潜971型(露) | UボートVII-C型(独) | 伊15型(日本海軍) | |
| 水中 | 34.0 knot | 35.0 knot | 7.6 knot | 8.0 knot |
| 水上 | 20.0 knot | 27.0 knot | 17.0 knot | 23.6 knot |
ドイツUボートや日本海軍伊15型のような、第二次大戦中の潜水艦の水中速度は水上よりかなり低い。
戦争末期には水上より水中の速度が大幅に上回る潜水艦が開発されたが、戦前には水中速度が数ノットは普通であった。
そして船型は水面を切り裂くために船首が尖っていて水上艦艇に近い。
それに対し原潜は逆に水中速度が大幅に上回っている。
涙滴型流線形を基本にしている現代の潜水艦の形は水中での水の抵抗を受けにくく、造波抵抗を受けない事も加わって水中速度が速くなるのである。
昔の潜水艦の水中速度はどうしてそんなに低いのか?
昔の潜水艦は潜水が苦手だった
帝国海軍伊15型潜水艦の主動力はディーゼル機関で、水上ではこれで航行しながら蓄電気に充電した。
ディーゼルを動かすには大量の酸素を使い、同時に燃焼ガスを排出するので水中では使用できない。
そのため潜航中はディーゼルエンジンを停止し、蓄電池に蓄えた電気によるモーターだけで航行した。
当時の蓄電池の能力は低く、速度3ノットで航続距離96海里という行動能力であり、潜航時の作戦行動は速度と潜航時間に厳しい制限があったのだ。
つまり当時の潜水艦は、通常は水上艦艇同様に行動して必要な時だけ潜航するという、潜水艦というよりは潜水できる艦船、つまり可潜艦と呼ぶべきものだった。
水上でしか機能しない、40口径14cm単装砲、25mm連装機銃が装備されているのはそのためであり、船首形状は通常水上艦艇に類する、造波抵抗が少なくなるように水上航行に適した尖った舳先になっていた。
当時の潜水艦は潜水が苦手だったのである。
動力機関の進化
潜水艦の動力機関は脱酸素動力と蓄電池能力の進化の歴史を持つ。
潜水時でも換気ができるシュノーケル。
化学的機械的に脱酸素を目指したワルター機関やスタリーング機関。
そして戦後、原子力機関登場により、理論上は無制限潜航が可能な、潜水艦の名に恥じない真の潜水艦が誕生した。
蓄電池の進歩も特に近年著しく、
画期的発明のリチウムイオン電池は通常潜水艦の潜航能力を飛躍的に進化させた。
時間的潜航能力向上により潜水艦の船型も水中行動に適した流線形に進化したのである。
※画像はイメージです。


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