狙撃手。どんな過酷な条件下であってもターゲットを逃さず、鍛えた精神力と技術力で敵を仕留める百発百中の狩人たち。
一見すると地味な彼らだが、その渋い魅力は多くのクリエイターたちを虜にし、さまざまなコンテンツで取り上げられる存在でもある。
今回紹介する漫画『ミハルの戦場』(原作/濱田轟天、作画/藤本ケンシ)もまたそんなスナイパーを主人公に据えた作品。名作揃いのスナイパー漫画のなかで、『ミハルの戦場』はどんな輝きを放つのか。
早速見ていってみよう。
スナイパーは小学生?崩壊した世界で悪魔の子が導くのは希望か破滅か
まず、今回紹介する漫画『ミハルの戦場』は、小学館マンガワン等で連載中の作品だ。
原作は『平和の国の島崎へ』の濱田轟天。作画は『何度、時を繰り返しても本能寺が燃えるんじゃが?』の藤本ケンシが担当する。
舞台は第三次世界大戦の後、列強諸国に分割統治され、荒廃した日本。
「統治」といっても実際にはさまざまな勢力が入り乱れて権益を争い、国土は内戦状態にある。そんな勢力のひとつ「日本国主権維持軍」で、トレーニングを受ける少年兵がミハルだ。まだ小学生ほどの年齢ながら、スナイパーであった父より狙撃を学び、凄まじい狙撃の腕を持つミハル。しかし彼女は、700mを超えると途端に命中率が下がるという「イップス」におちいっていた。そんなミハルの前に現れたのが軍事キャンプの食事係、ショウだ。
現在は第一線を退いているものの、かつては剛腕スナイパーとして名を馳せたショウ。そんな彼がいやいやながらスポッター(観測主)として前線に復帰。ミハルとバディを組むところから物語はスタートする。スナイパー(狙撃手)として悪魔的な能力を持つミハルと、「撃てなくなった」狙撃手ショウ。二人は戦場を生き抜くことができるのか……というのが本作のざっくりとしたあらすじ。
作品ではベテランのショウが、悪魔的な狙撃能力を持つミハルとバディを組み、さまざまなミッションをこなしていく様が描かれる。ここで触れておきたいのが、ショウの役割「スポッター(観測手)」だ。こちらは、あまり聞き慣れないポジションだが、実は狙撃手がミッションを遂行する上で、非常に重要な役割を果たす存在。なかなかメディアやコンテンツでは取り上げられないスポッターについて、以降で少し詳しく取り上げてみよう。
『ミハルの戦場』もう一人の主役!
スナイパーを取り扱ったコミック、『ミハルの戦場』のもう一人の主役、「撃てなくなった」元・狙撃手ショウ。彼はミハルとバディを組んで戦場に復帰するわけたが、その時就くポジションがスポッター(観測手)だ。
スナイパーを取り扱った作品であっても、あまりメインとなることがないため、耳なれない存在だが、実はスナイパーにとってスポッターは最重要人物。そんなスポッターの役割を、ものすごくざっくり表現すると、スナイパーにとっての目であり耳、高精度な機器と知識、経験で狙撃手をサポートするオペレーター、と言ったところだろうか。
フィールドスコープや距離計をはじめとした様々な機器を使ってターゲットとの距離、風速、その他もろもろを計測。また天候や地形などさまざまな事象を観測し、スナイパーに伝えるのがスポッターの主な役割りだ。
スポッターのサポートを受けることで、スナイパーは様々なデータを自分の手を煩わすことなく知ることができるし、また狙撃に集中できる。加えて、狙撃手は狙撃中は無防備になってしまうが、スポッターが側に居れば隙をつかれて敵に狙われるリスクも減る。スポッターの存在は、スナイパーにとってはいいことずくめ……というかもはや生命線と言っても過言ではないだろう。
そんなスナイパーにとっての生命線、スポッターとして前線に復帰するショウもまた、元・狙撃手としてのスキルと修羅場をくぐり抜けてきた経験で、ミハルをサポートし、また導いていく。天才児、ミハルと元凄腕、ショウ。二人の能力が作中でガッチリと噛み合う様は見ていて爽快だ。なかなかハードな世界観の作品ゆえ、ちょっと尻込みしてしまう人もいるかもしれないが、いったん読みはじめれば止まらなくなること請け合いだろう。ぜひ二人のサバイバルミッションをその目で確かめてほしい。
天才少女と元凄腕!異色の凸凹バディが征く戦場!
さて、ここまで『ミハルの戦場』のあらすじや、作中に登場するスナイパーの命綱「スポッター」について紹介してきたが、本作の一番の「引き」はやはりミハルとショウ、二人の主人公だろう。先ほど「スポッター」を取り上げた作品はなかなか無い、と紹介したが、実は少ないだけで「スポッター」が登場するエンタメ作品がないわけでは無い。
ただ、少女と大人の男性(ショウの年齢は不明だが確実に二十歳は超えている)がバディを組む作品は記憶にない。少女と青年の組み合わせと言えば『ゴールデンカムイ』がまず思い浮かぶものの、『ゴールデンカムイ』の主人公二人はバディでありこそすれ、「任務」を負った「兵士」ではなかった。また、もうひとつ大人と子供がタッグを組む『メダリスト』も、主人公たちはスポーツ選手と指導者での関係であり。
こちらもまたミハルとショウの関係性とは少し異なる。ミハルとショウは、何もないところから発生したフラットな関係でもないが、かと言って師弟関係でも庇護関係でもない。階級差はあるもののプロとプロ、自らが持った能力や経験でお互いを補い合う。作中の二人の関係は、なんとも言えないバランスの上に成り立った不思議なものだ。
性別や年齢などの差からちょっと匙加減を間違えば「危うい」関係になってしまいそうな二人だが、一巻の時点では不思議とフラットな「戦友」とも言うべき関係性が窺い知れる。これは結構エンタメとしては新しい兆候かもしれない。二人の関係が今後深まって無二の戦友となるのか、それとも別離が待っているのか。キャラクター同士のストーリーにもぜひ注文して読みたいところだ。
ミハルの戦場
今回取り上げた『ミハルの戦場』は、スナイパー、荒廃した近未来、天才児など、オーソドックスなテーマを取り上げつつ、今まであまりエンタメ作品に取り上げられなかった。
「スポッター」を主人公格に据えたり、年齢差のある男女キャラにタッグを組ませるなど、なかなか新しい潮流を感じる作品だ。
エンタメ作品界のスナイパージャンルに現れた新しい風。気になった方はぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。
(C) 原作:濱田轟天 作画:藤本ケンシ 小学校


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