90年代に子ども時代を過ごした人なら、『花子さんがきた!!』と聞けば「ああ、あのトラウマアニメの」とハタと膝を打つことだろう。同作は1994年から95年にかけて、フジテレビ系「ポンキッキーズ」内のコーナーとして放映された。
伊武雅刀による陰鬱ながらもどこかユーモラスなナレーションや、「ホワホワホワホワ はな子さ~ん」という主題歌を懐かしく思い出す世代人も多いに違いない。
さて、この『花子さんがきた!!』といえば、竹書房から出版された原作の中にはそれに匹敵する、あるいは凌駕するかもしれない話がある。
今回は原作第1巻の中から「人の首がなる木」を紹介しよう。
面白半分にざくろの実を食べたばっかりに
あらすじは次のようなものである。「ざくろは血の味、人の味…」F県にはそんな不気味な歌を歌うというざくろの木があった。その木になる実を食べてしまうと死んでしまい、木にはその首がなるというのだ。
るり子とあけ美という少女たちがその噂を知り、ざくろの木の前までやってきた。
好奇心旺盛なあけ美は、るり子が止めるのも聞かず実をもいで食べてしまった。すると、サーッという風と共に「ざくろは血の味、人の味・・・ざくろを食べたらざくろの木になる、実にかわる」という歌が聞こえてきたではないか。二人は悲鳴を上げて逃げ去った。
家へと帰ったあけ美だが、彼女の顔に恐ろしい異変が生じた。なんと、ざくろの実のような赤い発疹が吹き出しはじめたのだ。発疹は全身に広がった。彼女の身を案じたるり子が家に来た時には、あけ美は息を引き取っていた。
るり子からざくろの木の一件を聞かされたあけ美の母は、数日後、電動のこぎりを用意して木を切り倒してしまった。だがその夜、奇怪な歌と共にざくろの木は再生し、あけ美と母の首もそこになっていた。
二段構えの恐怖
この話の特筆すべき点は、最初の犠牲者であるあけ美に続いて、彼女の母まで死亡してしまう二段構えの恐怖にある。軽率な行動ゆえに命を落としてしまったあけ美だが、その仇を討とうとした母もあえなく死んでしまう。怪異の力によって、いとも簡単に人間が葬り去られるのが恐ろしい。
また、実を食べた者の首がざくろの実になってしまうというのも不気味である。ただ死んでしまうというのでなく、犠牲者が怪異の一部として取り込まれるわけだから、原作版デビルマンに登場するジンメンを思わせる。
もう一つ、ざくろの木が歌を歌うというのも見逃せない奇怪な要素だ。
特にラスト、夜中に「ざくろは血の味、人の味」という歌と共に木が復活するシーンは身の毛がよだつ思いがする。筆者は子どもの頃、このエピソードを読むたびに「ざっくろっはちのあじ、ひっとのっあじ」と節をつけて歌い、不気味さの余韻に浸ったりしたものだった。
ざくろの実と人の首
この話は、ざくろの実の断面が人間の脳を彷彿させることから作られた話なのではないか。真っ赤な粒の集合体という見た目は、たしかに砕けた人間の頭部を連想させる。
ざくろの「ざく」という語感も、何かがざっくりと切られた様子を想起させるものだ。ざくろの実自体に怪談となり得るポテンシャルが含まれていたといえる。そこに着目した作者の慧眼に脱帽である。
※画像はイメージです。


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