社~やしろ

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郊外に新たに造成された住宅地、7区画までは順調に工事が進み、すでに入居も始まっていた。
だが最後の1区画、角地にあたるその場所だけは、なぜかいつまでも完成しなかった。

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相次いだ事故

最初の異変は、クレーン車のトラブルだった。操作ミスのように見えたが、オペレーターは「手元のスイッチに反応しなかった」と訴える。
これをきっかけに、備されたばかりの重機のエンジンが停止し突然動かなくなり、基礎工事中に作業員が掘削機の脇で転倒し、足を骨折するなど。

他の区画では何事もなかったのに、なぜか次々に事故が続き始め、掘削作業を進めていたある日、作業員が動物の骨を発見した。
作業を続けるうちに、犬や猫のものと思われる頭骨や骨が複数見つかりはじめ、やがて、陶器の容器が見つかり、中には灰と小さな骨が丁寧に収められていた。

「昔、動物霊園みたいなもんがあったような事を聞いたことがある」
古くから地元に住んでいる年配の作業員が呟いた。

このままでは収まりがつかないと思い、現場監督が登記を調べたが、そんな記録はなかった。
古い地図を見ても、“ただの空き地”としか記されていない。

助言

不安を感じた施工主は、工事を開始する前に地鎮祭を頼んだ神社に相談を持ちかけ、やってきた神主に発掘された骨のことと今までの経緯をはなすと、こう語ったという。

「霊園があったか、無かったかではなく、もし、そこに何かが“眠っていた”のだとしたら、敬意を示してあげるのが、一番です」

祟りだとか呪いだとか、そういう言葉は使わなかった。ただ、「もし気になるようであれば、“かたちだけでも”で構いませんので、小さな社のようなものを建てて、手を合わせてみてください。“ここに安らかに眠ってください”と、そう祈っていただければ、それで十分だと思います」とだけ助言された。

しばらくして区画の外れに、目立たない小さな社を建てたのだ。
毎朝、朝礼の中で、工事の無事を祈りながら、線香を焚き、手を合わせるのが日課になった。
それ以降、事故は一度も起きなくなり、工事は順調に進み、住宅は予定通りに完成した。

入居者は、社の存在について特に気にしていないようで、仮に不動産業者に由来を尋ねても「昔からあったものを、造成を機会に立て直した」とだけ答えるという。

いまとなっては

この話を語る私は、この工事の責任者だった。
骨の出土について報告書には記さず、神社とのやりとりも関係者以外には伏せられている。

動物霊園があったかは解らない、工事の事故も単なる偶然だったのかもしれない。
でも、あの場所にだけ何かあったのはたしかで、それでもそこには、今も小さな社があり、ときどき住人の誰かが花を供えている。
ただ、一つだけ気になるのは、宅地内では見かけたことのない“白い犬”が、社の前で座っていたという話を、何人かの住民が口にしていることだ。

※画像はイメージです。

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