世界には珍しい植物が存在します。
血のような赤い樹液を流すリュウケツジュ、幹に大量の水をたくわえた巨木バオバブなどがありますね。
とれば日本だけでしか見られない植物は何でしょうか?
松、ソメイヨシノ 梅、朝露に濡れると花弁がガラスのように透き通るサンヨウカ。
植物に詳しい方であれば他にも思いつくでしょうが、私はオカルトにかけて盛岡原産のシダレカツラをあげたいと思います。
シダレカツラってなに?
シダレカツラとは日本固有の樹木で、文字通りカツラの葉が垂れています。
「それだけで何が珍しいの?」と思われるかもしれませんが、そもそもな話、カツラは上部に向かって伸びていくものです。
高さは20~30m。樹皮は灰色で、ハート形の葉は通常のカツラよりも厚みとやわらかさがあります。
しかしシダレカツラ最大の特徴は雄木しか存在しないことです。
実はカツラは雌雄異株、つまり雄木と雌木によって株を増やしていくタイプですが、シダレカツラは雌木がないので株を増やすことができません。
その理由は簡単で、シダレカツラは変異種なのです。
ここから先はシダレカツラの伝説をまず紹介していくことにしましょう。
シダレカツラは山神からの贈り物
むかしむかし、岩手県花巻市には妙泉寺というお寺がありました。
そのお寺は現在は廃寺となっているため、跡地しかないものの、この伝説は和尚と小僧がまだいた頃のお話です。
ある日のこと、お盆が近くなったということで和尚は小僧に境内にあるカツラの枝を集めるように言いつけました。
というのもカツラの葉を乾燥させると抹香をつくることができるからです。
けれど普通のカツラは上へ上へ伸びているもの。
小僧はカツラの枝集めに難儀した末に梯子から落ちてしまい、気絶してしまいました。
そんな小僧の枕元に早池峰山の山神・瀬織津姫と名乗る女性があらわれます。
山神がいうには「お前は和尚の言いつけをよく守っているものの、カツラの木は伸びていくばかり。それでは不便だから、ある場所に枝が垂れているカツラの木を1本置くことにした」とのことでした。
山神はその枝が垂れたカツラを境内に植えるようにといったところで、小僧は目を覚まします。
小僧は自分が見た夢について和尚に話すと「それはありがたいことだ」といい、小僧に山神が教えた場所に向かうように言い渡します。
次の日、小僧が教わった場所に行ってみると、そこには確かに枝が垂れたカツラがありました。
帰ってきた小僧がそのことを話したところ、和尚は「秋に掘り下げよう」というので、その年の秋にシダレカツラは寺の境内に移植されたのでした。
それから200年後、諸事情によって妙泉寺のシダレカツラは切られることになります。
その翌年の春、その代の住職の枕元に山神が立ち、「せっかく神が育てた木をいくら寺のためとはいえ、切ってしまうのは惜しい。切り株から芽梢が出るので大事に育てて、新根を多くの寺院に分けてほしい」と言ったそうです。
それから2、3日後、切り株から5、6本の芽梢が伸びました。
住職はこの不思議な出来事からシダレカツラを神の木とし、言われたとおりに大事に育てて根分けしたと言われています。
シダレカツラは世界の1つだけの樹木だけど
この伝説を聞いてこう思ったでしょう、「おいおい根分けできるじゃんか」と。
けれどそれは苗を作り出すのに成功した人物がいるからです。
その名は阿部善吉、残念ながら詳細はつかめませんでしたが、善吉氏は岩手出身の人物であるのは間違いありません。
この善吉氏が研究に研究を重ね、普通のカツラの苗にシダレカツラの芽をつなぐ芽接という方法によってシダレカツラを増やすことに成功しました。
それから割接ぎ法という台木に接着させる方法も確立されたため、シダレカツラは全国に広まることができたと言います。
シダレカツラにみちのくあり
登場人物はお寺の関係者なのに、不思議めいた存在は山神様。
順当に考えれば竜王や観音様などお寺で祀っている存在がシダレカツラをもたらしたと言い伝えてもいいのに、山の神様(しかも地域の神様!)を出しているあたり、土着を感じずにはいられません。
実は盛岡の龍谷寺には「モリオカシダレ」という桜の珍奇種があり、全国的に有名な石割桜に匹敵する桜があるのですが、この龍谷寺には盗賊に襲われた旅僧が観音様に助けられたというお話があるんですよね。
その観音様は片腕を失っており、今でも龍谷寺の櫻川観音像が祀られています。
つまるところ、現実的に考えてお寺が箔をつけようと(偏見かもしれませんが)自分たちが崇めている対象を持ちだすには自然だということです。
なのにシダレカツラには山神様が出ている、このちぐはぐさに私はみちのくらしさを感じます。
多分シダレカツラを発見したのは偶然だったのでしょうが、その説明に地元で祀られている山の神様を出してきたことはそれだけ地元を大切にしていたのだと思います。
時代的にそりゃそうだと言われたらおしまいですが、それってとても素敵ではないでしょうか。
シダレカツラとは
シダレカツラとは日本の固有種、もとい世界的にも珍しい木です。
読んで字のごとく枝が垂れており、雄木しかありません。
その理由はシダレカツラが変異種だからです。少なくともシダレカツラを増やせる雌木は現時点でもはt兼されていないですね。
そのシダレカツラには花巻市に誕生秘話的な伝説が残っており、寺と山神という不思議な組み合わせとなっています。
現在では阿部善吉氏による研究のおかげでシダレカツラは岩手だけではなく、全国的にも見られるようになりました。
※画像はイメージです。


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