私は幼い頃から剣道をやっていて、中学生の時に体験した怖い話です。
夜練
私の通っていた少年剣道部では、夜の7時から始まる「夜練」という稽古があり、地域の高段者の先生に直接教えてもらえる貴重な時間で、部員たちは皆、真剣に取り組んでいました。
しかし道場として使っている体育館は、昔から「幽霊が出る」という噂があったのです。
校舎の裏手にあり、その後ろには鬱蒼とした森があり、その森も自殺の名所だと言われていて強さを掻き立てます。
体育館自体もかなり古くて照明は薄暗い、影になった場所からはなにか潜んでいるようで怖かった。
練習をしているときは集中しているのでどうってことないのですが、終わって一息つくとなんともいえない気持ち悪さを感じることがしばしばあり、私だけかと思っていたら、引率の先生もちょっと怖かったそうです。
先輩の話し
ある夜練の日、体育館で準備運動をしていると、高段者の先生が突然の用事で来れなくなったと連絡がありました。
話を聞いて、その場にいた全員のやる気が無くなり、ぼんやり座っていると、1人の先輩が「みんな聞いて」と話し始めたのです。
それはつい最近体験した怖い話で、先輩は何時もより早く体育館に到着してしまい、鍵を開ける当番が来るのを待つあいだ、雨が降っていたので見送りしてもらっている母親と車の中にいたそうです。
するとなんだか体育館の上の方に視線を感じ、見上げてみると屋根の上に傘も差さずにじっと立ち尽くす、赤いワンピースの女がいたのでした。
屋上は立ち入り禁止、あんな場所に人がいるはずがありません。
母親に「あれなんだろう?」と話しかけた瞬間、前のめりに飛び降りたのです。
「わあっ」と声をあげて驚きながら車から降りて、落ちた辺りを観に行くと何もありません。
後から傘をさしてやってきた母親に事情を話すと「疲れているだと思うから、今日はお休みしましょ」と一言いわれ、練習に参加せずに帰ったというのです。
思わぬ反応
私はこの話を聞いて、あまりに突拍子もないので「またまたそんな作り話で、皆を強がさせようなんて」を言って、軽く先輩を小突いたのですが・・・・。
でも周りを見回すと、けっこうな数の部員が怖がった表情をしているので、話を聞いてみると、その部員たちは「赤いワンピースの女」を目撃した事があるというのです。
森の奥に見えた、トイレの前にいた、体育館の端にいて声をかけたら消えた・・・等など、屋上以外にもいくつもの場所に現れ、共通点は雨が降っている夜。
全員が恐ろしくなって、泣き出す子もいたのですが、練習が終わって親が迎えにくるのは後1時間ぐらいあります。
運が悪いことに引率の先生も用事があって、変える頃にならないとやってきません。
私達は体育館の中央の一番明るい場所に集まって、震えていました。
「ポタポタ・・・」、どこからか水の滴る音が聞こえてきて、恐怖心を煽ります。
一晩中いたような気すらしました。
引率の先生がやってくると、全員が飛びついて、どんなに怖い思いをしたのかを訴えますが、大笑いされておしまいでした。
終わらない恐怖
しばらくすると私の親も迎えきて、ようやく帰れると安堵しながら車に飛び乗りました。
いつもと様子が違うので、先輩の話や怖かった事をはなし、車がゆっくり動き出したときです。
ふとお母さんがバックミラーを見ながら、「1人だけまだ迎えに来てないようね」と。
「誰だろうと?」ふりかってみると、傘をさした赤いワンピースの女が立っていたのです。
とっさに「知らないよ!」といって、肩にかけていたタオルで顔を隠しました。
それからも「夜練」は続き、ときおり「赤いワンピースの女」を見たという話があったのですが、私が見たのはその一度きりでした。
※画像はイメージです。


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