ラブラドール獣害事件にまつわる陰謀論

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1886年7月29日のアメリカの新聞「Daily Republican」によれば、カナダのラブラドール地域でホッキョクグマ約1000頭により、数百人の人々が食い殺されたという。
その後他の新聞社もこぞって本件を報じた。

これが史上最大規模の獣害事件である。
最初に種明かしをしておくと、これは誤報或いは捏造であったとされる。
だが、火のないところに煙は立たない。
一体、ラブラドール事件は、何故でっち上げられたのだろうか。

目次

ラブラドール事件概略

ご存知ない方のため、ラブラドール事件の全容について軽く触れておく。
1886年、ラブラドール地域で飢餓が発生した。
食人すら行われるほどの深刻な状況で、不衛生な食事で赤痢も発生、入植者も現地人のイヌイットも憔悴する中、ついにホッキョクグマが襲来したという。

とあるイヌイットの村では28世帯全てが襲われ、岩によじ登って難を逃れた若者4名以外は殺され、その後訪れた狼らによって肉片も残さず喰い尽くされた。
若者達は、その後ホワイトベアーの入植地に辿り付き、一命を取り留めた。

その後、本件の信憑性を否定するニューヨーク・タイムズの記事が掲載され、カナダの地元紙も「事件はでっち上げ」と表明したという。
実際、事件を報じる記事に、時系列が怪しい部分などもあり、現在のところ事実とは認定されていない。

現在のところ、と言ったが、虚実曖昧な事件に対し「明確に否定されないから事実である」というのは悪魔の証明であるから、「事実ではない」が答えである。
近年になって、SNSなどで取り上げられる形で話題に上がっているが、新たな情報が足されている訳ではなく、フェイクニュースであったという評価は覆ってはいない。

新聞の信憑性に関する誤解

「新聞に載っていたのだから事実じゃないか」と感じたなら、新聞に対して日本人が持つ信頼は少々過剰であると認識すべきだ。
新聞には一般向けの大衆紙と、知識層向けの高級紙(クオリティ・ペーパー)という二通りが存在する。

本件のあった19世紀末は、印刷技術の発展でスピーディーかつ安価に新聞が発行出来るようになり、大衆紙が隆盛し始めた正にその頃である。
販売部数を増やすため、大衆が興味を惹かれやすいショッキングで興味深い記事が乱造された。
当然、他の新聞社からのパクリで部数が稼げるならそれも敢えて用いる。
イイね欲しさに嘘記事を投稿したり、バズっている記事ばかりリツイートしたり、無関係の記事に話題のタグを付けたりするSNS依存に陥った人と、メンタリティは近い。

日本の新聞の場合、期間契約による配達という販売戦略を採っていたから、こういったショッキングな手段は不要だったのだろう。逆に嘘記事を繰り返せば、契約解除されるリスクの方が大きい。
このため、定期購読ではなく店売りされるスポーツ新聞には、結構怪しい記事が載る事がある訳だ。
昔、スポーツ誌を定期購読した時、エロ記事が付いていなかったが、それも同じような理由だろう。

イヌイットをアメリカ人は省みたか

ラブラドール獣害事件が捏造だったとして、何故、これを大衆紙がでっち上げたのだろうか。
当時のアメリカ人にとって、黄色人種のイヌイットの生死に話題性は皆無だ。

奴隷解放宣言が1862年だが、1896年には白人専用車両に乗り込んだアフリカ系混血のホーマー・プレッシーが有罪判決を受けている、そんな時代の出来事である。
アメリカにおいて、白人以外は人間ではなかった時代と言い換えても良い。

そんなイヌイットの死を報道した理由。
これは、ラブラドールという土地に関する、米国政府の思惑が絡んでいたのではなかろうか。
当時ラブラドール地方は、当時の英国領「ニューファンドランド自治領」に含まれる。
地図を見て貰えば分かるが、カナダの東端に位置し、1866年には大西洋横断電信ケーブルが敷設され、ヨーロッパと繋がれた場所でもある。

ヨーロッパやアメリカ東海岸からの玄関口と言って良い。
ここを手に入れられれば、カナダから産出される物産により大きな利益が見込める。つまりアメリカのカナダ進出の足がかりとして、ラブラドール獣害事件はでっち上げられたのではなかろうか。

村が壊滅するほどの獣害事件であれば、軍隊による支援が望ましい。
本国であるイギリス軍が大西洋を渡るより、アメリカ軍が近海を渡った方が遙かに効率が良い。
急がねばならない、アメリカは人種差別を撤廃した自由な国家だ、たとえイヌイットであろうと守る動機がある。

相手は獣害だ、1度行っておしまいではない、駐屯して継続的な監視が必要だ。
何、イギリス軍の援助は必要ない。アメリカ軍単独の方が統制が取れる。
実効支配してしまえば、後は何とでもなる。イギリスから独立させてやれば良い。なに、初めてって訳じゃあない。

ラブラドール事件の狙い

だが、当時のカナダは開拓途上の国だ。
西部開拓のためのカナダ太平洋鉄道がようやく完成した時期だ。
それほどの輸出が期待出来るだろうか・・・然り。

これからを考えれば充分期待できる。
期待の最たる物は石油である。
広大なカナダの大地に、油田が発見される可能性を見たのではないか。

当時、次世代のエネルギーとして徐々に浸透し始めた石油の利用であるが、精製途上に発生する揮発性の高いガソリンは処理が難しく廃棄されていた。
これを利用した内燃機関を、1883年にゴットリープ・ダイムラーが開発する。
石油はこれによって、より商品として純度の高いエネルギーとなり、価値が大きく上がっていく。
そんなエネルギー革命の只中、先行投資としてカナダに目を付けたのではないか。

しかし、結論としてこの記事は不発に終わった。
同年9月、ジェロニモの降伏によりアパッチ戦争が終結し、アメリカ国内の情勢が安定し、国内の油田探索が容易になっていった。
これにより、記事を補強する更なるフェイクを用意する事もないと判断されたのだろう。
まだ石油の埋蔵量という概念も曖昧だった時代、手近に油田が見つかるならそれで話は終わってしまう。

ハッピー・エンド

こうしてラブラドール獣害事件は、過去のフェイク記事の文脈で語られる、のどかなおとぎ話となった。
もしもこの策略が成功していたら、アメリカの現在の発展は更なるものとなっていたろうか、それとも何かしら破滅の引き金となっていただろうか。

ともあれ、ホッキョクグマに食い殺された憐れな人々はいなかった、それをまずは喜ぼう。

参考:
ウィキペディア 石油・新聞・米国合衆国の人種差別・ニューファンドランド (ドミニオン)・アパッチ戦争

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