私の通っていた高校は自宅から10kmぐらい離れていて、自転車で40分ほどかけて通学していました。
ある日、部活が長引いて帰宅する頃にはすでに日が落ちていまい、真っ暗な田舎道を自転車のライトだけを頼りに、家へ向かってペダルを漕いだのです。
毎日の通い慣れた通学路なのに、その日に限ってなんだか違和感を感じました。
いつまで経っても帰れない帰り道
その違和感とは、「さっきもこの道を通った気がする」。
確かに家に向かって進んでいて、道のりもあと半分ぐらいというところで、なぜかそんなように感じたのです。
辺りに田んぼが広がる真っ直ぐな道なので、そんな事はありません。
部活で疲れているからだろうと思って、いったん自転車を止めて水筒の水を飲みながら一息つき、なんとなく周囲をみまわすと、後ろの方に光が見えました。
50メートルほど離れた位置にあり、よくみると自転車のライトです。
この道を自転車で通るのは、だいたい同じ高校の生徒ぐらいなので、同じように部活かなんかが長引いて、今帰る途中なんだろう。
思いながら休んでいるのですが、なぜか一向に近づいてきません。
私はとたんに怖くなって、自転車に飛び乗って必死に走るのですが、なぜかどれだけ全力で走っても、その光は一定の間隔を保ちながらついてきます。
さらにちょっと前から感じていた違和感が現実化したように、一本道なのに同じ道をぐるぐる回っているようで、走っても走っても、なぜか家に近づいてこないのです。
次第に恐怖心を募らせ、必死にペダルを漕いでいると・・・。
突然、辺りが薄明るくなり、ついてくる明かりが見えなくなった途端、今まで走っていた田んぼ中の道の風景がぱっと変わり、家まであと少しの辺りを走っていました。
ようやく家に帰り着いてみると、信じ難い話ですが体感30分ぐらいなのに、時計は朝の5時を指していたのです。
狐に化かされた?
「みんな、心配していたんだぞ」と起こっている父に経緯を話しました。
あまりに荒唐無稽なので信じないだろうなあ・・・と思ったのですが、「狐に化かされたんだ」と笑ったのです。
父の話によれば、その辺りには稲荷神社があり、イタズラが好きなお稲荷さんがいるという民話もあるようで、不思議な体験をしたという話が多い場所だそうです。
たしかに怖い思いをしたけれど、子どもの頃から住んでいる地元ですが、そんな話は聞いた事はなく、学校で皆に話をしても作り話と言われ、なんだか納得がいきません。
モヤモヤとした気持ちで過ごしていたある日、私と同じように子どもの頃から住んでいる年配の国語の先生がいて、噂を聞きつけたようで授業中に体験談を語ってくれたのですが、驚くほど内容が一致していました。
そして、この先生は郷土史を研究しているので、稲荷神社について話してくれたました。
ほとんど忘れてしまいましたが、父が言うようなイタズラなお稲荷さんの話で、怖いというよりもなにかほっこりするような、笑い話に近い内容だったのです。
ほんのちょっとした出来心なのか、退屈していたところに私だったのか、悪意はなさそうなので安心しました。
その日の帰り道、今まで気が付かなかったのですが小さなお社を見つけたので、「もう勘弁してくださいね」と手を合わせたのでした。
※画像はイメージです。


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