「合体メカ」とは、複数のそれぞれ自律した機体が変型し、組み合わさる事で更に強大な人型マシンやメカへと変貌を遂げる存在を指します。
複数の機体が組み合わさる事で、その力が倍加したり、機能が付加、増幅されるのは、単純なパワーアップの力強さに胸をときめかせてしまう。機能が向上するという利便性においても、人の心を掴んでしまうものがあるのではないでしょうか。
しかし現実においてこのような機械が実現したという事例は、ごく単純な接続や連結するというものでもかなり珍しく、エンターテインメントで為されるようなものはほぼ見られない。
「現実の壁」を乗り越えていく事は本当に不可能なのか?
今回はそんな「合体」に焦点を当ててみたいと思います!
フィクションでは「合体」は欠かせない?!
エンターテインメントの世界において「合体」は、既存の能力を有する機械。多くは人が搭乗する戦闘機や車両、重機などの機体が、合体変型機構によって、部位パーツへと変型、組み上げられる事です。
より大型で強大なメカが完成するテクニカルな増強システム、或いは柔軟な運用性を与えるシステムとして描かれます。
その極めてダイナミックな機械的描写や、新たな能力であったり、強力で勇ましい姿を与える事から、特にロボットものにおいて、包括的な上位概念として「物語的要素」となっています。
映像作品での先駆けは、巨大ロボットに乗り込んで操縦する草分けの「マジンガーZ」を生み出した「永井豪」氏と、盟友の「石川賢」氏のタッグによって1974年に生み出された「ゲッターロボ」です。
「永井豪」氏は「マジンガーZ」において、搭乗者が乗り込む操縦席は独立した乗り物が、巨大ロボットと合体(パイルダーオン)する事で操縦可能となる。巨大ロボットは後に開発された飛行ユニットと合体する事で飛行能力を得る。という描写を行っており、巨大ロボットの挙動に関するアイデアは現代に繋がる要諦を形作っていたと言えます。
「ゲッターロボ」において既は、三機の戦闘機が合体する。三人の搭乗者の内一人が主体となる合体によって、空(ゲッター1)、陸(ゲッター2)、水中(ゲッター3)と異なる戦術適正を発揮する。後の作品にも大きな影響を与えたと言える要素が多数盛り込まれ、「合体メカ」の礎となっています。
ただ「ゲッターロボ」における「合体」の扱いは、メカニカルなものと言うよりは物語的な文脈に則るもの。搭乗者の3人の青年が強大な敵と戦う為に「命懸け」でより強大な力を手にする、という部分を強く打ち出したものになっています。
それ故「合体」は戦術適正に応じて3つの形態を使い分ける「柔軟性」の高いもので、それぞれの姿形も合体前後で大きく形を変わり、メカニズムの掘り下げはあまり行われないものとなっていました。
この点を物語る制作エピソードとして、制作に携わった「石川賢」氏が合体デザインについて頭を悩ませていた所、「永井豪」氏がマンガ的な突拍子も無い方法を提案する事で突破口が開かれた、という話があったそうです。
かくして「ゲッターロボ」は「合体メカ」という鮮烈な要素を打ち立てた記念碑的作品となりました。
しかし、作品が打ち出した柔軟性の高い合体メカを、当時の技術では玩具化にまでこぎ着ける事は叶わず、それぞれのメカ事に商品化したのです。
玩具化の成功
それぞれのメカを合体させる玩具化の流れを実現したのは「ゲッターロボ」から2年後、1976年に放送開始された「超電磁ロボ コン・バトラーV」です。
「コン・バトラーV」は宇宙より襲来する通常兵力では太刀打ち出来ない強大な勢力に対し、国連の協力を得て開発されたというある種の政治的な背景を含んだ絶対戦力である事が示唆されます。
搭乗者それぞれが搭乗機体に見合った専門性を持つ事で、合体せずとも性能を発揮出来る運用しつつ、合体によって単一の機体になった時、強大な戦力や戦術適正を発揮するといった思想が含まれていると考えられます。
それとともに玩具としての立体化を視野に入れたデザインであったので、ここで初めて合体玩具としての展開が成功したとも言えます。
スーパー戦隊シリーズへ
この思想は1980年代になると「スーパー戦隊シリーズ」へと引き継がれ、「合体ロボ」の主軸をとしたストーリーの流れになっていきます。
「変身ヒーロー」の武器以外にも「相棒」のような形で、敵大型メカに対して合体によって対抗するという形が形成されております。活動の柔軟性と兵器としての威力を両立させるという、戦闘のみが求められているのではない極めて困難な立場故に必要とされる、ある種の「苦肉の策」が形を為したものだと言えるかもしれません。
この流れは更に90年代に入ると「スーパー戦隊シリーズ」と並走するような形で、「勇者シリーズ」としてアニメ作品にも展開します。この頃になると「人格を有したロボット同士が合体する」というアプローチや「スーパー合体」等とも称される「合体した機体同士が更に合体する」といった、二次強化のような形が現れる事となりました。
これらは「本来の性能を超過して強大な戦力を得る」という文脈で用いられる事が多く、ある種の「リミッター」が「合体」であるという事が言えるのではないかと考えられます。
リアル路線へ
1979年、リアルな兵器としての色合いが強い「機動戦士ガンダム」が放映開始されますが、ガンダムも、変形合体メカなのです。
玩具を意識しつつリアルさを失わない「コア・ブロック・システム」は、モビルスーツの胴体部分のコックピット一帯が小型戦闘機として分離し、独立して運用出来る設計されたというものです。
設定上、ガンダム・ガンキャノン・ガンタンクという三機を白兵戦、中距離砲撃・長距離支援火力の目的に合わせた機体として建造するという計画において、機体の中枢である「コア・ブロック」=「コア・ファイター」を共通化する事で、機体を「組み替えて」運用するという事も可能であったとされます。
この運用柔軟性を「ガンダム」という「兵器」に合う形へ修正したと言えるのが、サポートメカニズム「Gファイター」と呼ばれる存在です。
これは「ガンダム」の組み替え構造に適する形のサポートパーツを組み替える事で、要求される戦術に適応する形態へと「合体・変型」させる思想とされます。
劇中においてスポット的に幾つかのタイプが投入される事となったこの方式は、後の作品において「サポートメカ」や「増強パーツ」等の形で定着していく事となり、「コア・ブロック・システム」と共に「合体」をシステマティックに検討していく方向性となったものと言う事が出来るでしょう。
リアルで合体が否定されがちな事情
エンターテインメントにおける「合体」の方向性が、大まかにと「運用柔軟性」や「追加・増強」という方向性を表わしてきた事が見えて来ました。
いずれも一概に利点があると言いにくいものではありますが、それぞれ導入を動機付けた理由はありそうと言える事を踏まえ、現実における「合体」の例を考えて見ます。
もちろんエンターテイメントで見られるような例は存在しないものの、現実においても広義の「合体」と言えるもの、複数の機体を接続や連結する事で運用を行う例というものは存在します。
最もそれに近いと言えるのは「国際宇宙ステーション(ISS)」の例でしょう。これは複数の「宇宙船」や「モジュール」と呼ばれる増補用の施設をドッキングする事で、少しずつ施設を大型化していき、現在のような大型施設として機能が強化されたというものです。
合体方式については、機体同士が相対速度を調整しながら慎重にドッキングするというものになっています。
エンターテインメントの世界と異なり「敵の妨害」という危険性は無いものの、一度の失敗で何もかもがご破算になりかねないリスクと隣り合わせの手段。
この失敗時のリスクが極めて高いというのは、現実における「合体」を否定する大きな問題の一つと言えます。
合体とエネルギー
戦力を作り上げる必要性に迫られたと仮定して「合体」というプロセスが現実的かと考え、更に構成要素の強度や搭乗者の安全性なども確保されたという理想的な状況が作られたとして、その上で障壁となるのが「エネルギーの問題」という事になるでしょう。
エンターテインメントの世界において「合体」が語られる際、多くのケースは「それぞれの動力源がエネルギー回路も接続して一つの回路を形成し、パワーアップする」という事を実現していると考えられます。
イメージとしては電池とモーターや豆電球の回路において、電池を直列で接続する個数を増やせばパワーアップするという実験に見られるようなものがあるかもしれません。
しかし現実的な問題として、例えば戦闘機動を行う「合体ロボ」のような機体の場合、合体によって「重量が増える」という問題がまず浮上します。
これは動力を伴う機械が避けられないそもそもの難題であり、しかも「合体」という行為では後付けで増える重量を「前もって勘案しておく」という問題が浮上する事になります。
そして、重量増加を補って余りある出力の向上等がある、或いは合体によって達成出来る目的があるとした場合にも、根本的に「稼働中の異なる動力源を直結させて高出力が得られるのか」という問題が存在します。
実際問題として電力ならば「電気抵抗」、内燃機関や蒸気機関なら「熱損失」というように、現行技術上では「エネルギーを取り出す」というものを「複数組み合わせる」事で「1+1=2」という具合の「効率の良い」組み立ては非常に難しいというのが大多数とされます。
ジェットやロケット等の「推進装置」に関しては数を増やす事での「利得」が期待出来る部分もありますが、殊「合体する事で強くなる」という「合体ロボ」のような「増強」は現状では中々難しいと言わねばならない所となります。
現実の戦闘機などの例では「増槽(プロペラントタンク)」によって搭載燃料を増やし、航続距離を伸ばしたり、戦車が「追加装甲」として後付けの装甲を増やす、等が「増強」の例だとされます。
その意味においては「複数組み合わせる事が簡単に出来、しかも出力を安定的に増強出来る」エネルギー機関が開発出来れば「合体」への道筋が開けるのかもしれません。
現行の兵器を見た時、特に戦闘機は「マルチロール」と呼ばれる「装備を換装する事で複数の戦術に対応出来る」性能が求められる傾向を見せる向きもあります。
その意味では合体は、人が思い描く「理想」を大きく先取りしているものであるとも言えるでしょう。
※画像はイメージです。


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