我が家には古くから代々続く、妙な習慣がありました。
「女は男より先に風呂に入ってはいけない」
誰が言い出したのかは分かりませんが、祖母も母も何の疑いもなくそれを守っていたし、私も当然のように従って育ちました。
しかし、思春期になると反抗心が芽生え、特に父親の入ったあとの風呂は汚れているような気がして、嫌悪感すら抱いていました。
習慣を破った日
ある日、学校で嫌なことがあって、帰宅してすぐ風呂に入ったのです・・・それも父よりも先に。
その瞬間、祖母にものすごい剣幕で怒鳴られました。
「お父さんは疲れて帰ってくるのに!女が先に入るもんじゃない!」
とにかく言葉の嵐で、内容はほとんど覚えていません。
覚えているのは、ただ一言だけ。
「あんたも危ないんだよ!」
その言葉だけが、ずっと頭に残っています。
「危ない」とは一体何が?
当時の私は、祖母の迷信めいた言い方を鼻で笑って流していましたが、それから数日後、その意味を思い知る事になったのでした。
恐ろしいこと
その日も祖母と些細なことで喧嘩し、意地になって父よりも先に風呂に入りました。
浴槽に浸かってしばらく経った頃、突然、風呂場の電気がバチンと消え、一瞬、停電かと思いました。でも、家の外の電気はついています。
誰かを呼ぼうとしましたが、声が出ません。喉が凍ったようで、体もまったく動きませんでした。
お湯に浸かっているはずなのに、体温が急激に下がっていく感覚。
そして、次の瞬間、股の間を舐められるような感触が走り、恐怖で意識が遠くなっていった時です。
「あんたいつまで入ってんの!!」
祖母の怒鳴り声とともに電気がつき、気づいたら私は湯船の中、へたり込んでいました。
寝てしまっていたのかもしれない。そう思おうとしましたけれど、あの触感と寒さは夢とは思えません。
それ以来、私は父よりも先に風呂に入ることをやめました。
ただの迷信・・・そう言い切ってしまうには、あまりに生々しく、恐ろしい経験だったのです。
私になにが起きた?
先日、実家に帰ったときにふと思い出して、あの出来事を考察してみました。
私の出身地は、妖怪譚の多い地域です。
もしかすると、風呂には女を狙う妖怪のような存在がいて、男が先に入ることでそれを追い払うという言い伝えが、かつてはあったのかもしれません。
それが今ではすっかり廃れてしまい、口伝えの中で伝承の「中身」が抜け落ち、「女が先に入るな」という形だけが残ってしまったのではないでしょうか?
その結果、現代人には男尊女卑的な風習に見え、「古臭い」「理不尽」とされてしまった。
でも、本来は女を守るための知恵だったのかもしれない??
そんな風に思うのです。
まあ、今こんな話を真顔ですれば、お叱りを受けるか、変な目で見られるかもしれません。
ですが、私はもう二度と、父より先に風呂には入りません。
あの夜の冷たさと恐怖が、今でも体に染みついているから。
※画像はイメージです。


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