戦艦大和の艦首にある、あのまるっこいデッパリは何?
大和の艦首
戦艦大和の艦首下部は異様に突出している。この船首形状はバルバスバウ(球状船首)と呼ばれる。
船が水上を移動する時、水面には波が発生する。船の移動エネルギーの一部が水に作用して波が起こるのだが、
これは船のエネルギーを波の発生のために無駄遣いしているのと同じである。
このエネルギーの無駄遣いを造波抵抗といい、速度や燃費に悪影響を及ぼす。
造波抵抗を抑えるには波を小さくすればよい。
波は周期的な山と谷の連続である。ある周期の波の山に別の波の谷を重ねてやると波は小さくなる。
つまり船首で発生する波の直前で,バルバスバウがタイミングよく別の波を造り、
船首による波を打ち消すことにで造波抵抗を軽減するのである。
戦艦に向かないバルバスバウ
しかし波の大きさは船の速度で大きく変化し、その周期も変わる。
船首の波とバルバスバウの波の周期がずれると造波抵抗の抑制効果も低下する。
戦艦は燃費効率の良い巡行速度と戦闘時の最高速度の差が大きいので、本来はバルバスバウを活かしにくい。
にもかかわらず帝国海軍は大和に敢えてこれを採用した。
その結果、最大戦速27ノット航行時において、出力換算で15,820馬力分の節約になったと謂れている。
これは最高出力(15万馬力)が実質一割強アップしたのと同じである
また全長換算では10数mの節約とされ、
火力・防御力・動力の各性能そのままに、数%の船体小型化と同効果を得た事になる。
帝国海軍技官の努力
当時、世界に類を見ない超ド級戦艦建造に、バルバスバウの導入を目指した海軍技術研究所は、
1年以上にわたって50隻以上の模型を使った実験試験を繰り返した。
その結果、造波抵抗を最小限に抑制できる船型の最適解を得た。
即ち、最大戦速にフォーカスしながら、巡行速度でも効果の見込めるバルバスバウの形状・大きさを見出したのである。
大和は日本初のバルバスバウ装備艦となり、以後、民間の大型客船に導入が始まった。
しかしバルバスバウのもう一つの欠点は一定深度の水面下でしか効果がないことで、
貨物満載時と空船では喫水が大きく変化する貨物船には装備が難しかった。
設計理論が確立
1960年代、日本人研究者たちの研究でバルバスバウに関する設計理論が確立し、設計資料が整備された。
これにより複雑な条件下での効果測定がわずか数隻程度の模型試験で可能となり、
貨物船を含む大型船へのバルバスバウの本格的導入が可能となった。
この様な系統だった理論や資料がない時代に、果てしない模型実験を繰り返すという帝国海軍技術陣の苦労と努力によって、戦艦大和のあの美しい船体は生み出されたのである。


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