アニメ『ダンダダン』2期も無事に終了した。
精巣の回収は縦軸として弱く、恋愛部分も両思いで既に完結しているので、先の展開が気になるという事もないが『ゲゲゲの鬼太郎』的に1エピソード完結で観るのに丁度良い作品になっていた。
本作のメインキャラの1人、白鳥愛羅と関わりのあった怪異「アクロバティックさらさら」は、「八尺様」がイメージ元の1つと考えられている。
この八尺様という怪異というか妖怪というか、名前は目にするがあまり実情を知らないという人も多いのではなかろうか。
八尺様とは
八尺様とはどようなものなのか。
初出は「2ちゃんねる」オカルト板の2008年8月26日スレッド「死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?196」とされる。
まず、八尺様の「八尺」は、身長を表しているという。
長さ単位としての「尺」は、昔から使われていたものだが、現在これを言う場合、通常明治時代に定められた1mの33分の10(303.030mm)を指す。
従って、八尺というと、約240cmという相当な長身となる。
人間の女のような見た目で、服装は白いワンピースに鍔広の帽子をかぶっているのが一般的だが、元ネタでは「頭に何かを載せている」という部分以外は定まっていない。
『ダンダダン』では普通に喋っていたが、八尺様の場合「ぽぽぽ」または「ぼぼぼ」という変な声、または笑い声を出す。音質は「男のような」というから、低音なのだろう。もっとも、他人の声真似も出来るので、これは特徴とは言い切れない。
そして八尺様に魅入られる(原文ママ)と、そのままでは数日のうちに取り殺される。
被害に遭うのは、成人前の若者や子供だという。
日中に目標を追跡する事はあるが、直接取り殺すのは夜の事らしい。
一方弱点としては、地蔵によって移動が制限され、お札を貼り、盛り塩を置いた部屋に入る事もできない、といったものがある。ただ、声真似でおびき出そうとする事があったり、盛り塩が黒くなっていたりするので、籠城し続けて安全でいられるかは定かではない。
端的に言えば、夜に子供をさらうタイプの妖怪である。
八尺様の成立要件
ここからは、報告者の書き込みに(勘違いがあるにせよ、主観的には)嘘がないものという前提で進めよう。
物事は、人がやれる事は人がやっているものだ。
そこに敢えて遠回りしてオカルトを採用する必要はない。
超能力と手品で同じ結果が起こせた時、差異が明らかにされない限り手品だ。
つまり、八尺様というのは、人間である可能性はなかったろうか。そこから辿ろう。
240cmの女性
この身長の女性は、現実にも存在した。
記録に残る中で最も背の高い女性が、中華人民共和国の曾金蓮(1964〜1982)で、249cmである。
非公式なものでは、オランダのトリーンティ・キーファー(1616〜1633)が、身長254cmだったという。男性の場合はロバート・ワドロー(1918〜1940)が272cmである。
彼らは脳下垂体腫瘍によるいわゆる「巨人症」によって身長が伸びたものである。
「ぽぽぽ」「ぼぼぼ」という声
言おうと思えば誰でも言えるので、特に妖怪や怪異と断ずる根拠にならない。
そもそも、声真似などで普通に喋る事も出来るので、妖怪である理由にはならない。
未成年や子供をさらう事
犯罪白書によれば、令和元年の「略取・誘拐」の認知件数は293件である。
妖怪や怪異による犯行なら失踪扱いになるのが道理なので、十分人間に可能な行為と言える。
お札が貼られた部屋に入って来られない
物理的な鍵も同時にされていれば、人間も入れない。
地蔵で移動を妨げられる
本人の意思次第なので、妖怪を表す性質とは言い難い。
部屋の中にある盛り塩を黒くする。
これは、人間には不可能だ。
これらをまとめると「盛り塩を黒くする能力」がありさえすれば、人間にも八尺様の再現は可能という事になる。
もっとも「盛り塩が黒くなる」というのも、床に溜まったホコリなどが付着して、「色が付いた(=黒に寄った)」と認識するだけでも当てはまってしまう。
「八尺様は怪異、妖怪」説は、かなり危うくなってきた。

八尺様は、本当に八尺も身長があったのか
とはいえ、240cmの人間が、そうそういるものではない。
それはそうだ。
だが、この「八尺」という数字は、実際の240cmではない場合がある。
「八」というのは、時に「多い」を意味する。
これは「千代に八千代に」という言い回しなどにも見て取れる。
だとしたら、八尺様は個性の範疇で少し背が高かっただけの人、という可能性が浮上してくる。
村社会において、余所者、異端はすなわち排斥の対象である。
不利な遺伝形質の排除、外部からもたらされる疾病や人員増による消費の増加など、生き残りの戦略として合理的な場合もあるが、排斥される者にとっては単なる悲劇だ。
そんな中、一般的にみて背が高すぎる女性が、何らかの形で孤立し、コミュニティと距離を取って生きていた可能性はないだろうか。
これはすなわち「魔女」「山姥」の類型である。
そして、村の主たる人々は、、分かりやすい外部者として、村で生じた問題を押しつける。
夜歩きする子供に「あの背の高い女がさらって喰ってしまうよ」と言い聞かせる。問題が起きれば「あのひょろ長い女が呪いをかけたのだ」と言い立てる。
殴られ役は、自分達と属性がかぶっていない事が望ましい。
僅かな身長差を針小棒大に引き延ばし、絶対的な差である「八尺」にしたのではないか。
八尺様は、そんな人の弱さが生み出した幻影であり、モデルになった女は、ただの人間だったのではないか。
八尺様の思いは
もしも、その不遇の中で命を落とし、化けて出る、といったプロセスを経ているなら、それは八尺様というよりも、幽霊の類だろう。
こうなると、怪異を退散させるというよりは、無念を解いて往生させる事にこそ、道があるだろう。
地蔵を超えられないというのは、地蔵に救われ往生したいという、彼女の切なる願いであるのかも知れない。
※画像はイメージです。


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