その霊園には、祖父母の墓がある。
年に数回、命日やお盆の時期になると、どうしても行かざるを得ない場所だけれど、正直、気が進まない。
でも行かないという選択肢はない。
家族の中で車を出せるのが私しかいないことも多くて、自然と運転手役を引き受けることになる。
霊園はとにかく広くて、入口から年寄が歩いていける距離ではない。
お盆の時期は人が多く、霊園らしからぬ賑わいがある。
私は霊感があるわけではない。
見えるとか、聞こえるとか、そういう経験は一切ない。
それでも、この霊園に来るたびに「空気が重い」と感じる。
理由は分からないが、「空気が重い」と感じる。
霊園には火葬場が併設されていて、市内に火葬場がほとんどないため、亡くなった人はほぼここで火葬される。
園内を移動していると、白い煙が立ち上っているのが見えることがある。
それが火葬によるものだと分かっているからなのか、その煙を含んだ空気を自分が吸っているのだと意識してしまうからなのか、この場所にいると気分が良くない。
怖い、というより、嫌な感じだ。
できれば、なるべき来たくない。
この霊園には、昔から有名な噂がある。
今は撤去されて存在しないが、園内に電話ボックスが一つあって、そこには女の霊が出ると言われていた。
夜、その電話ボックスに電話がかかってきて、出ると女のうめき声が聞こえるという話を聞いた事がある。
電話ボックスが撤去されてからも噂は消えず、近くを通ると携帯に非通知の着信が入る。
出ても無言か、ノイズだけ。そんな話が今でも残っている。
よく幽霊や人魂を見たという話も聞く。
私はそういった体験をしたことがないから、ほんとうか嘘かは解らない。
ただ、そういう話があってもおかしくない場所。
面白半分でこういう場所に来るべきではないと思っている。
ここは、多くの人が眠っている。
祖父母も、誰かにとって大切な人だった人たちも、静かに眠っている。
ただ手を合わせて、用が済んだら帰る。
それでも霊園を出るとき、いつも少しだけ胸が重くなる。
理由は分からない。
だが、理由が分からないままでも、私はこの場所を好きになれない。
だから必要がある時だけ、ここに来る。
それ以上でも、それ以下でもない。
※画像はイメージです。


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