二年前の冬のこと、友人と出かけた温泉地で、湯上がりに宿の近くにある遊歩道を散策しました。
雪に覆われた道は両脇の木々の雪が月明かりに反射して淡く光り、なんだかきれいでした。
でも私たち以外に人の姿はなく、私たちの足跡だけが雪に続いていました。
そして、ふと風に混じって小さな鈴の音が聞こえました。
最初は近くの家の風鈴かと思いましたが、この季節にそんなものを出しているはずもありません。
そのなかで鈴の音に混じって子どもの笑い声がしたように思い、それも「こっちだよ」と呼んでいるようにも聞こえました。
最初は私だけが聞こえているのかと思うと、友人も聞こえているようでした。
なんとなく、冗談半分に声の方へ向かって歩きました。
そうしていると雪の斜面に小さな足跡がいくつも並んでいました。
それも靴跡ではなく裸足の跡に見えるのですが、この雪の中で裸足はありえません。
なにか嫌な予感がして、友達と引き返そうとした瞬間、視界の端に人影が見えました。
着物を着た数人の子ども達が木々の間に立って、じっとこちらを見ていました。
隣にいた友人も同じ方向を凝視していたから、幻覚ではなかったと思います。
一歩後ずさった途端、影はふっと消えました。
でもどこからともなく小さな鈴の音が聞こえました。
私達は背中に冷たいものが走り、怖くなって雪の中を走って逃げました。
元来た道を戻り、宿に転がり込んだときには全身が凍えるようでした。
その後、すっかり冷えてしまった体を温める為、もう一度、温泉に浸かりました。
ですがどこからともなく、小さな鈴の音が聞こえ、なんだか視線を感じ続けていたのを今も忘れられません。
あれはいったい何だったのかは解りません。
でもこの温泉地のそばで、大昔に雪崩で村が一つ潰された事があるという話を、宿の女将さんから聞きました。
あれはその村の幽霊だったのでしょうか。
「こっちだよ」と呼んでいるように聞こえたのは、私達を新しく犠牲者にしようとしたのかもしれません。
そう思うと恐ろしくてたまりません。
※画像はイメージです。


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