ご近所さんの手土産

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都内のマンションに引っ越してきて、半年ほどが経った頃。同じフロアに住む女性とエレベーターで何回か顔を合わせるようになりました。
年齢も近そうで感じの良い人なので、親しくなり軽い世間話もするような関係に。
向こうも気に入ってくれたのか、たびたび手作りらしいクッキーを差し入れてくれるようになって行ったのです。

目次

最初のうちはよかったけれど

最初は良かったけれど、だんだんとお返しするよりも貰う方が多くなり、私は少し気が引けてきました。
申し訳ない気持ちもありますが、面倒くさく思い始め事もあって、ある時、「これ以上はお気遣いなく」と丁寧に断ったのです。

すると彼女は一瞬黙り、悲しそうに微笑みました。

「わかりました。でも、最後にひとつだけ受け取ってほしいものがあるんです。少しだけ、外で待っててもらえますか?」

彼女の部屋の前で5分ほど待っていると、手提げ袋を抱えて出てきた彼女は、それを私に手渡しながら、ぼそりと呟いたのです。

「忘れないでくださいね」

そう言って、彼女は部屋に戻っていったのでした。

手渡されたもの

なんとも言えない気持ちのまま自室に戻り、袋の中を確認すると・・・。
中には、使い古されて泥のついたボールと、汚れたハンカチが入っていて、どちらも明らかに長く使い込まれ、生臭いような異様な臭いが漂ってきます。

「いったいこれは何なのだろう?」
あれほど親しくしていたのに、差し入れを断ったことで気分を害したのでしょうか?
まさか、私への当てつけのつもり?
不気味というより、怖い。こんなことをする人だとは思いませんでした。

ただでさえ同じフロアなので顔を合わせることもあります。謝ったほうが良いのかもしれないと思いながらも、部屋の呼び鈴を鳴らす勇気がなかなか起きません。
夜、仕事から帰ってくると、廊下側の部屋の明かりが灯っているのが見え、生活音もかすかに聞こえます。
住んでいる事は確かなのですが、あの出来事を境に、なぜかお隣さんと顔を合わせることは二度とありません。

気がついた事

私の行動パターンを知っているので、彼女は私を避けているのでしょうか?
いずれにしても怒っているようにしか思えません。
モヤモヤした気持ちのままで生活していたある日、遊びに来ていた友人に思い切って相談してみました。

友人は最初のうちは冗談だと思っていたのですが、渡されたあの包を開けて中を観察していたときです。

「ねえ・・・このハンカチに書かれている名前に見覚えがない?」

そういって私の目をまじまじとみつめて・・・。

「ねぇ?そのお隣さんって、同級生の〇〇ちゃんじゃないよね?」

私達はハッとして家をでて、忍び足で部屋を覗きにいくと表札にはXXと書かれていました。

すぐさま逃げるように家に戻り、私は卒業アルバムを引っ張り出して名簿を確認すると。
「XX〇〇」さんの名前を見つけ、住所を確認すると。

「やっぱり!」

二人揃って叫び、顔を見合わせます。

「XX〇〇」さん

記憶の彼方に忘れていた「XX〇〇」さんとは、いい大学に行かせる為に躍起になっていた両親とはウラハラに、彼女は野球が大好きで親には内緒でソフトボールに入っていました。
彼女なりに努力していたようで部活と現況を両立し、いつも成績はトップだったのです。しかし、3年生になって部活を辞めて受験勉強に本腰を入れようとした矢先、両親に部活の事がバレてしまったのでした。

親を騙して部活をしていた。それを知った母親の何かが壊れてしまったようで「XX〇〇」さんへの虐待が始まったようです。いままで明るかった「XX〇〇」さんは無口になり、生傷がたえなかったのを思い出します。
間違いなく虐待がきっかけで成績が落ちて、大学受験に失敗してしまうのですが、両親はソフトボールのせいだと言って話を聞かず、高校を卒業する直前に自ら命を絶ったのでした。

地元ではちょっとしたニュースになった事件で、彼女は目隠しをされた状態で、繰り返しソフトボールをぶつけられていたという証言が取り上げられていました。

そんな事を思い出したのです。

ちょっと待って!

友人が眉をひそめ、私に話しはじめます。

「そうすると今までクッキーをもらっていて、この袋を渡したのも『XX〇〇』ってなるよね?」
「亡くなっているのに?ありえないよね?」

疑問に思った私達は恐怖より好奇心が強くなり、卒業アルバムに載っていた『XX〇〇』の電話番号にかけてみる事にしましたが、「現在使われておりません」とアナウンスが流れます。

「真相を確かめるために彼女の部屋に行こう」と友人とともに向かい、ピンポンを押すと、出てきたのは見知らぬ中年の男性だった。

「新しく引っ越してきたようなのでご挨拶に・・・・」

私たちがそう取り繕うと、彼は不思議そうに眉をひそめた。

「いや、俺もう2年ここ住んでるけど?」

私たちは無言で顔を見合わせた。

じゃあ、今まで会っていたあの女性は、いったい誰だったのだろう?
ボールと汚れたハンカチが入った袋が手元にあるし、自室の冷凍庫には、手作りらしいクッキーが一袋だけ残っている。
どうしたら良いのだろう?

※画像はイメージです。

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