私が通っていた高校は全寮制でした。
4人一組の寮でルームメイト達とは仲が良く、恋愛や将来の話など、何でも気兼ねなく話せる関係でした。
休みの前の夜
期末テストが終わって夏休みが始まります。
それぞれが実家に帰る前日の夜、「夏といえば怪談だよね」と、それぞれが知っている地元の怖い話を話す事になりました。
それぞれに地元を感じさせる不気味な話に肝をひやされ、そして最後に話し始めたのがAでした。
「俺が生まれた場所が変なんだ。」
Aの実家は遠方なうえに離島なので、各地から生徒が集まっているこの学校でもの同郷の生徒はいません。
だからこそ、何が変なのかとドキドキしてきます。
「俺の住んでた地域は島だ。みんなの家ってグーグルストリートビューで見られるだろ?でも俺の住んでる地域は映らんのよ。俺の家だけじゃなくて、地域全体が。」
グーグルストリートビューは田舎だと見られない場所がありますし、離島であればなおのことなので、気になりません。しかし、Aの話は次第に奇妙なものになっていきました。
「俺の島には神様みたいな人がいるんよ。架空の神を崇めてるんじゃなくて、本物の人間。その人が村の全てを決める。ルールも法律も全部。その人の言うことが絶対なんだ。」
信仰宗教のような話に聞こえたのですが、島であれば村長の権限が強いこともあるでしょう。それを神様みたいと大げさに言っているのだろうと思いながら、あえて誰もがツッコミを入れずに静かに聞きます。
「その人が『島を出て、寮に入って勉強しろ』って言ったから、俺はここに来た。でも、やっぱりあの人の言うことは正しかった。こうやって友達ができたし、お前らのことほんとに好き、こんなの言えたの初めてだ。」
Aは涙ぐんでしました。私たちもつられて涙が出そうになり、怖い話のはずが、なぜか感動的な雰囲気でした。
友人達と「なんやねんこの話、でも良かったわ」と言いながら、新学期にまたここで会おうと誓いあって眠りについたのでした。
Aの誘い
次の日の朝、「休みに俺の家に来やん?」と私達に声をかけてきました。
Aの実家までは電車や船を乗り継いで1日以上かかり、観光地でもないので行ってもつまらないでしょう。
それを知っていた私たちは、どう返事をすべきか迷ってました。すると、1人の友人が「休みは地元の彼女と過ごしたい!」と言い出しました。
「そうか、仕方ないな。彼女の方が大事やもんな。」
そんなんで良いかの!と他の皆も立て続けに、「それっぽい」言い訳を考えて断ると、Aは少しイラッとしたような分きになります。
そして次の瞬間、「じゃあさ、神さんの写真見せるから、みんなで拝もうや。」と言い出します。
断れる雰囲気ではなく、たぶん冗談だと思ったこともあって、私たちは「わかった」と返事をしました。
Aは自分の机の引き出しから写真を取り出し机に立てますが、写真を近くで見せようとはしません。
全員星座をさせられ、Aが手本を見せ「真似して」と言うので、私たちは言われるがままに拝むと、Aは笑顔で「ありがとうな」と言います。
ふと見えた写真には人形のようなものが写っていたので、全員がやっぱりギャグだと思いました。
たぶん昨晩の話の流れから、全員が来てくれると思ったので、彼なりの仕返しなのかな?
いつものノリだと「人形やないかー!」とか誰かがイジるところですが、みんながなにか違和感を感じていたようで黙っていました。
それにしたって趣味悪すぎと思いながら、それぞれ実家に帰っていきました。
消えた友人
夏休みが明けて久しぶりに寮に戻ると、みんな少しずつ印象が変わっていました。
しかし、Aの姿が見当たらりません。
ラインをしても既読にもなりませんが、なんせ遠いのでこっちに向かっている途中なのかな?
ところが始業式になっても現れることなく、ホームルームが始まり、担任の先生がこう告げたのです。
「Aは自主退学しました。」
私たちは驚き、先生に理由を聞いても解らないらしい。
なにかプライバシーのような事で教えてくれないと思ったのですが、ご両親から手紙が一通届いて、なんの理由も書いてなかったと教えてくれたのです。
その後、LINEも通話も繋がらず、彼のSNSも削除されていました。
何度も連絡を試みたが、Aとは二度と繋がることはありませんでした。
大人になった今でも、Aのことを思い出すことがあります。
ひとつ思うのは、Aの話した事はすべて本当で、外部に話してはいけないものだったのではないかということ。
それがどうやってかは解りませんが島の人に知られてしまい、外に出られなくなったのでしょう。
もしかした単なる邪推かもしれませんが、島に行って確かめるの事はしたくありません。
※画像はイメージです。


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