復活のマコモ湯

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健康法はオカルトの入り込む余地が大きい分野である。
個々が認識する「健康」の概念がいい加減な上に、効果測定も困難であるというのが、入り込む隙間だろう。

科学の場合、新しい知識は古い知識を土台とし、発展していくものだが、オカルトにおける新古は流行の側面が強い。
このため、昔廃れたものが、ひょっこり発掘される事もある。
マコモ湯も、その1つだ。

目次

マコモ風呂再び

昨年、マコモ風呂の話題が再燃し、SNSを騒がせた。
マコモ風呂、マコモ湯は、90年代に取り沙汰された健康法であるが、30年を経た令和の世になって再び人目に触れる事となった。

令和のマコモ湯に人々が興味を持ったのは、

  • 1年半水を替えていない
  • 水が真っ黒に見える

という点である。

このため「気持ち悪い似非健康法」という文脈で、炎上気味に広がっているようだが、少し冷静になるべきだ。
「盗人にも三分の理」という言葉があるように、オカルトにも五分程度は理屈がある。
肯定にせよ批判にせよ、知る事は必要である。さもなければ、牧羊犬に追いかけられて動く羊と変わらない。

マコモとは

マコモ(真菰)というのは、水辺に生える植物の名前である。
アジア原産でイネ科に属し、葉の外見はイネやススキに似る。茎は丈夫でいわゆる「カヤ」の1つとして、ムシロや注連縄などを編むのに使われる。
出雲大社では、マコモを重視しており、神事に用いられるという。

このマコモを用いたのがマコモ湯だが、菖蒲湯のようにそのまま葉を放り込む訳ではない。
化粧品「お風呂用マコモ」を販売する株式会社リヴァーヴによれば、「マコモをできる限り小さく粉末化する」らしい。それに加えて、企業秘密の同社独自の複雑な製法によって、マコモに本来存在しない「マコモ菌」を「発生」させるという。

このマコモ菌は、胃酸や「100℃以上」の高熱でも死なず、腸内フローラを整える働きをするという。

お気づきだろうか。

少なくとも、同社商品については、「風呂の水を替えなくても良い」とは書いていない。

マコモ風呂は水を替えなくて良い説の起源

マコモ風呂に「風呂の水を替えなくて良い」機能があるとの説を広めたのは、小幡玻矢子氏であるとされる。
1990年代から2000年にかけてメディアの露出もあった人物である。

尚、同氏の著作を検索すると分かる通り、彼女は「健康法の権威」ではなく「節約の権威」である。
つまり、マコモ風呂に関して、健康面に期待するのは最初から間違っている、という事である。
真似た結果、僅かでも水道代が安くなったのであれば、それこそが彼女の提唱していたものである。

そしてそれ以外の効能がないからといって、彼女を責めるべきではない。

仮に当時彼女が「健康に良い」と言っていたとして、それは門外漢の戯言のレベルであり、本人も承知の上の、ギャグやジョークの類だ。
発端がジョークであるから、今回の話題で「マコモ菌の不可解な性質」や「マコモ菌の実在性」について考える事に意味はない。

我々が知りたいのはただ1点、「1年半前のマコモ風呂なんかに入って大丈夫なの?」という部分である。
令和のマコモ風呂騒動の発端は、とあるインスタグラムに投稿された動画である。
検索次第では視聴できるが、転載禁止となっているので、投稿者名やURLは伏せる。

動画で投稿者が話していた内容から読み取ると、この「風呂の水が1年半使える」説の根拠は、

「醗酵の力で雑菌をおさえる」

という事のようである。

イネ科植物の例

醗酵で出来ない事

納豆や味噌、酒など、醗酵したものは腐りにくい。
だとすると、確かに醗酵しているマコモ風呂は腐りにくそうだ。

——そうだろうか?

諸兄は、醗酵食品を自分で作った事はあるだろうか。
そしてその際、最初に何をやるか、ご存知だろうか。

殺菌である。

何に触れずとも、大気中にあるだけで、物体は菌まみれである。
醗酵をもたらす菌類が根付く前に雑菌が入れば、醗酵は失敗し、腐敗する。だから、発酵食品の製造は、雑菌が入らないよう徹底して殺菌する。

漫画『もやしもん』で、火落ち菌がいかに酒蔵で恐れられているか、という描写を思い出せば良い。
醗酵の過程で「雑菌」が殺されるのであれば、この殺菌工程は不要の筈だ。

それがマコモ菌の特異性なのだろうか?
だが、仮にマコモ菌の醗酵に限っては、その他の菌全てを殺すものだと考えても、現実と噛み合わない。
何故なら、そこまでパワフルなマコモ菌であれば、地球は既にマコモ菌に支配されている筈だからだ。

雑菌とは目標の菌以外の全てだ。
つまりマコモ菌以外全ての菌が滅び、それに依存した生態系は破壊され、人類も遠くない将来滅びる。
マコモ菌が原初に生まれていたなら、そもそも動物に進化する以前に、地球はマコモ菌一色になっていたろう。
いや、雑菌は熱に弱いのだから、風呂の湯で殺菌されているのである。

無菌の湯をマコモ湯にするから、先手を打って増殖し、新たな雑菌の入る余地をなくす。

そういう理屈はどうだろう・・・否である。

殺菌に熱が有効な理由は、菌が生物だからである。

生物は蛋白質によって構成される。そして蛋白質は熱で不可逆に変質する。
生玉子が固まるのと同じだ。
そして当然、玉子か固まる程度の熱は必要だ。
具体的には75℃以上で、ほとんどの雑菌が死滅すると言われている。

インスタグラムの投稿主は、風呂をそんな温度で沸かしたのだろうか。
してはいないだろう。

それほど特別な手順を取るのであれば、語らずにはいられないからだ。
故に、マコモ湯の中にマコモ菌はいるかも知れないが、それと充分張り合える量の雑菌はいるというのが結論だ。
そもそも動画の解説通りにマコモ菌の「醗酵」に、本当に殺菌作用があったとしても、マコモ湯が無害になる理由とはならない。

人に害を為す菌は、しばしば「毒」を作り出す。菌を殺して終わりではない。
腐った物は煮沸しても食べられないのと同じだ。
仮に、マコモ菌がその毒さえ無効にするとしても、水の中には、皮脂や汗、垢などが混ざり込む。
感情面でも清潔とは感じられないだろう。

マコモ湯は有害なのか?

と、ここまではワンセンテンス、長期放置型マコモ湯批判のテンプレである。

オカルトは、理屈よりも、現象に目を向けるべきだ。
理論を積み上げる科学よりも、現象を列挙し共通点を見出す疫学に近い。
1年半放置したマコモ湯が雑菌まみれの不潔な湯であるなら、何故かのインスタグラマーや小幡玻矢子氏は、健康を損ねていないのだろう。

見た目で分かるような、明快な不潔さがないのだろう?
我々は、これと非常によく似たものを知っている。
澄む事も無く濁り続け、汚れを大量に含みながら、人がそこに浸かり、効能すら感じている水。

インドの聖なる河ガンジスである。

無数の汚れや時には人の死体までもが投げ込まれる水で、人は沐浴する。
だからといって、直ちに死ぬような人間がいる訳でもない。

これは何なのか?

理由の1つは、何らかの強い信仰や信念が、これらの害を無毒化するというもの。
思考に力があるなら、短時間の入浴や沐浴の間、菌や毒の侵入を防ぐ事も出来るのではないか。
これならマコモ湯が無害な事も頷ける。マコモが凄いというより、彼らの信念の勝利だ。
そしてもう1つは、皮膚のバリヤ機能が、この程度の汚水なら防げる、という可能性である。

人類は元々、野外で生きていた。
泥水を啜り、川で水浴びし、尻は拭かない。そういう生き物であった。
人間に、その時代と大きく性質が変わるような、生物学的な進化はまだ訪れていない。
放置型マコモ湯はつまり、本来の人間の能力からすれば、ごく有り触れた汚水ではないか。

無論、傷口にこすりつければ化膿もしよう。だが、それは土をこすりつけても同じ事。湯の側の責任というよりは、怪我の恐ろしさという文脈だ。

ゴールラインは移動する

直ちに病気にならないなら、多少のリスクを呑んで、水道代を節約したいというのであれば、マコモ風呂の水を変えずに使い続けるのも、1つの道であろう。

そこからは生き方の問題だ。

「毎日新しい水を入れた風呂に入らないと絶対的に不潔で、それを怠れば直ちに絶対病気になるし、悪臭がして遍く人々に蛇蝎の如く嫌われる」

そんなナイーブな考えを捨てれば、むしろ人生の足取りはずっと軽くなるかも知れない。

この20年か30年ほど日本人は勘違いするようになったが、毎日清潔な水で入浴するのは、人類にとってちっとも普通の事ではない。
古今東西見渡しても、圧倒的な少数派の習慣だ。
現代の日本国内でさえ、夜勤でその日に入浴出来ない人はいる。介護施設の入所者であれば、入浴日は週2回がスタンダードだ。

未来も危ういものだ。
日本の水資源の収支は赤字状態である。農業生産、工業生産を海外に頼る事で維持されているに過ぎない。
今後日本の購買力が低下し、国内産業優先で水が振り分けられたら。
庶民は、ボウフラの湧く防火用水につかり、雨水のシャワーで身体を流す、そんな未来も当たり前にあり得るのだ。

参考
・小幡玻矢子 アマゾンの著作一覧
・ピクシブ百科事典「マコモ湯」
・株式会社リヴァーヴ

※画像はイメージです。

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